多頭飼いをしていると、毎日の生活がちょっとしたお祭りのようになります。特にわが家で一番の盛り上がりを見せるのが「ご飯の時間」です。
待ちに待ったご飯の時間が近づくと、部屋の中の空気は一変します。3匹の猫たちは、キッチンをうろうろしたり、しっぽをピンと立てて足元にすり寄ってきたりと、期待に満ちた目でソワソワと歩き回り始めます。腹時計が正確な猫たちにとって、この時間は1日の中で最も重要なイベント(^^)
そして、私が「ご飯だよー!」と魔法の言葉をかけた瞬間、まるで徒競走のピストルが鳴ったかのように、猫たちは一番乗りを目指してご飯の場所へと一直線に猛ダッシュ。
フローリングで爪を滑らせながら走っていくその後ろ姿は、何度見ても微笑ましいものです。
事件発生:なぜか1匹明後日の方向へ
しかし、ここでいつも予想外の動きを見せるのが、我が家のムードメーカー「きなこ」です。
他の2匹が綺麗にスタートダッシュを決めて、自分のお皿の前にピタッとスタンバイする中、なぜかきなこだけは、ご飯とは全く違う明後日の方向へ迷走。
勢いよく走り出したかと思えば、誰もいない廊下の奥へ向かったり、キャットタワーに駆け上ったり。「えっ、そっちには何もないよ?ご飯あっちだよ?」と、思わずツッコミを入れたくなるような見事な迷走っぷりを見せてくれます。最終的には「あれ?みんなどこ?」というようなキョトンとした顔をして戻ってくるのですが、この一連の流れが面白すぎて、毎日のように笑わせてもらっています。
一体なぜ、きなこはこんな不思議な行動をとるのでしょうか?実は、こうした「なんで?」と言いたくなるような行動には、猫ならではの習性や本能が隠されているのです。
ご飯前のダッシュは「狩猟本能」のスイッチ
調べてみると、猫がご飯の前後に突然走り出す行動は、決して珍しいことではないようです。これには猫の「狩猟本能」が深く関わっています。
野生の猫は、獲物を捕まえるために全速力で走り、エネルギーを爆発させて狩りを行います。現代の飼い猫たちは狩りをする必要がありませんが、その本能はしっかりと受け継がれています。ご飯の匂いを嗅いだり、「ご飯だよ」という声を聞いたりすることで、この狩猟本能のスイッチがパチッと入り、「獲物を捕まえるぞ!」という興奮状態に陥ることがあるのです。
これを専門用語で「真空行動」と呼ぶこともあります。獲物がいないのに、まるで狩りをしているかのような行動をとることです。きなこが明後日の方向へ走っていくのも、もしかすると頭の中では見えない獲物を追いかけている最中なのかもしれません。

のんびり屋のきなこに限っては、そんなこもないとは思いますが(笑)
人間には聞こえない音が聞こえている?「驚異的な聴覚」
もう一つの可能性として考えられるのが、猫の「優れた聴覚」によるものです。
人間の可聴域(聞こえる音の範囲)が高音で約2万ヘルツなのに対し、猫はなんと約6万5千ヘルツという超音波の領域まで聞き取ることができます。さらに、耳の筋肉が発達しているため、パラボラアンテナのように音のする方向へ耳を動かし、音源を正確に特定する能力を持っています。
つまり、私が「ご飯だよー!」と言った瞬間、きなこの耳には「窓の外を飛ぶ虫の羽音」や「遠くの道路を走るバイクの音」、あるいは「壁の裏を這う小さな虫の足音」など、人間には全く聞こえない音が届いていたのかもしれません。


ご飯の誘惑よりも、その未知の音に対する好奇心や警戒心が勝ってしまい、「なんだあの音は!」と確認しに明後日の方向へ走ってしまったとも考えられます。
嬉しすぎてパニック!?「転位行動」の可能性
さらに猫の心理的な面から見ると、「転位行動」という現象も理由の一つとして挙げられます。
転位行動とは、動物が強いストレスを感じた時や、相反する感情(例えば「ご飯が食べたい!」という欲求と「でもちょっと怖い!」などの感情)がぶつかり合って葛藤した時に、全く関係のない別の行動をとって心を落ち着かせようとする心理メカニズムのことです。
きなこの場合、「ご飯だ!嬉しい!早く食べたい!」という興奮が最高潮に達し、そのあふれ出るエネルギーを持て余してしまった結果、脳が一時的にパニックになり「とりあえず走る!」という全く別の行動に変換されてしまったのかもしれません。
嬉しさを全身で表現しすぎてバグが起きてしまったと考えると、より一層愛おしさが増しますね。
多頭飼いでのストレスフリーなご飯のコツ
ここで、我が家のように複数の猫と暮らしている方へ、ご飯タイムに関するちょっとしたコツをご紹介します。きなこのようにマイペースな子がいる場合、以下のポイントに気をつけると、みんなが平和にご飯を食べられます。
- 【お皿の距離を離す】 猫は本来、単独で狩りをして食事をする動物です。他の猫が近すぎると「自分のご飯を取られるかも」と焦ってしまい、早食いや消化不良の原因になります。パーソナルスペースを確保してあげましょう。
- 【食べるスピードに合わせる】 食べるのが遅い子や、きなこのように寄り道をする子が、早食いの子にご飯を横取りされないように見守ることが大切です。場合によっては、食事の部屋や空間を分けるのも効果的です。
- 【静かな環境を作る】 聴覚が優れている猫にとって、食事中の大きな音はストレスになり
- ます。テレビの音量を少し下げるなど、安心して食事に集中できる環境を作ってあげてください。
自由で気まぐれな「猫らしさ」に魅了されて
きなこの明後日の方向への謎のダッシュ。その理由が狩猟本能であれ、聞こえない音のせいであれ、ただテンションが上がってしまっただけであれ、その圧倒的な自由さこそが「猫らしさ」です。
猫はとても気まぐれな動物で、行動は常にその時の気分次第。理屈通りにいかないことばかりです。しかし、その予期せぬタイミングでの行動や、不思議なこだわりを見ていると、日常の中にクスッと笑える瞬間がたくさん生まれます。
「なんで今そっち行くの?」 「どうしてそこで止まるの?」
そんな風に、私たちが思わずツッコミを入れたくなる瞬間こそが、猫という存在から目が離せなくなる最大の理由なのでしょう。今日もまた、我が家には「ご飯だよー!」の声とともに、ドタバタと走り回る3匹の足音と、ちょっとした笑い声が響き渡ります。












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